東洋医学を使用したPMS対策方法として、漢方での治療があります。
効果的な漢方の種類から、漢方治療が受けられるクリニックを紹介しています。
体全体のバランスを整える漢方で根本治癒を目指す
低用量ピルなどのホルモン剤に抵抗を感じる方や、持病があってピルを服用できない方などにおすすめの治療法です。“気・血・水”という3つの要素を基本と考える東洋医学では、それらの巡りのバランスが崩れることで病気が起こるとしています。西洋医学的に見ると、“気”はエネルギー、“血”は血液、“水”はリンパ液やその他の体液が当てはまり、それぞれの巡りを漢方薬によって整えて、体全体の不調をなくしていく方法と言えます。
PMSの場合は、気・血・水のすべてに異常が見られ、体質に偏りがある方が多いので、それぞれの巡りを改善する漢方薬を組み合わせて処方します。
PMSで顕著な症状と言えば、イライラや落ち込み、不安感などの精神症状でしょう。PMSでのイライラ感を訴える女性に対して、加味適遥散を中心とした漢方薬を処方したところ、27名中23名に効果があったという報告があります。漢方薬を処方されてから、1~2か月程度で症状がほとんどなくなったという方も多く、西洋医学の治療薬ほどではありませんが、即効性も期待できそうです。
参考:社団法人 日本東洋医学会「月経前症候群に対する加味逍遥散を中心にした漢方療法」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1982/56/1/56_1_109/_pdf/-char/ja
漢方薬は精神的な症状だけでなく、月経痛の軽減にも効果的だという報告があります。この報告は、加味帰脾湯を用いたもので、精神的な症状と共に月経痛も軽減したそうです。加味帰脾湯は、疲れや食欲不振などの症状に対して処方されることが多いのですが、「血」を増やして熱を鎮めるサポートをする漢方薬です。そのため、心と体を十分に休めることができるようになり、痛みやイライラ感を抑える効能を発揮します。
参考:一般社団法人 日本東洋医学会「強い気虚,不眠がある抑うつ傾向の患者に加味帰脾湯を投与したところ月経前症候群のみならず月経痛にも奏効した3症例の検討」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/65/4/65_273/_pdf/-char/ja
漢方薬はいくつかの生薬を組み合わせて処方するので、「この症状に効く」といった定義はありません。それは裏を返せば、イライラ感や月経痛以外の症状に対しても、自分の症状にあった漢方薬を処方してもらえるということです。漢方薬のPMSに対する効果は、不定愁訴と呼ばれる「なんとなく体調が悪い」という症状に対するもの。そのため、一人ひとりのPMSの症状にあわせて、実感できる効果は異なってきます。
PMSに対する漢方薬の効果は、抗うつ薬と同等の効果を発揮すると言われています。ですが、体質や症状によっては、あまり効果を実感できない場合もあると思います。そういう場合でも、抗うつ薬や低用量ピルと併用することができる点が、漢方薬の特徴です。医薬品のサポート的存在として使うことで、症状をさらに緩和させる、医薬品の副作用を軽減させるなどの効果もあります。
PMSは月経の約1週間前から起こる、体や心の深い症状を指します。女性にはポピュラーな症状ですが、その原因がはっきり断定されていない部分もあるものです。漢方の視点ではPMSの原因を、卵巣から分泌されるホルモンの変化とその人の体質や体調によるものの2点であると考えています。
これは月経前の子宮内膜の様子や、骨盤内の血液循環が変化するために血液の流れが滞ること、月経前のホルモン量の変化により、体内に水分をため込みやすくなることから水むくみが起こること、さらにホルモンバランスの変化で精神的にコントロールが難しくなることで、「血」「水」「気」のバランスが崩れ、さまざまな症状を引き起こすことになるという考え方です。
PMSは、これらの体のバランスがすべて乱れている状態。そのため、各症状に働きかけることができる漢方を複数組み合わせて処方し、総合的な解決を目指します。
ホルモンバランスを整えるには薬だけではなく漢方も有効だという事がよくおわかりいただけたのではないでしょうか。
そもそもホルモンバランスが乱れている状態とは、基礎体温の低温期と高温期の2つにわかれており、それぞれの温度差が0.3度以上無く、排卵がきちんと行われていない場合はホルモンバランスが乱れていると言われるようです。
ホルモンバランスが乱れる原因は2つあると言われています。
まず1つ目は年齢との関係です。
ホルモンバランスが乱れやすいのは、主に思春期と閉経後の更年期だそうです。
思春期の場合、体の成長が不十分で、上手にホルモンバランスを取ることができないことから、乱れやすいと言われています。
閉経後の更年期の場合、女性ホルモンが減少するためその減少に体が上手く対応できず、結果としてホルモンバランスが乱れてしまいます。
2つ目は生活習慣です。
寝不足や過度なダイエットやストレスなど、生活習慣が乱れてしまうとホルモンバランスが乱れてしまいます。
また、ホルモンバランスだけでなく、自律神経の乱れも同時に起こってしまうこともあります。
現在の若い女性はSNS疲れなどで、特にストレスが溜まりやすいのでストレスを上手に発散、コントロールを行わないとホルモンバランスが乱れてしまいPMSにも繋がってしまうかもしれません。
ホルモンバランスの乱れがPMSにつながってしまうこともそうですが、それ以前に生理不順や強い生理痛があなたを襲うことでしょう。
生理不順とは、無月経や過小月経、頻発月経といった生理の乱れ。
それに伴い、強い生理痛に襲われることもあれば、不正出血が頻繁に起きることも。
生理が不安定かつ肌荒れやニキビが気になる場合、女性ホルモンが乱れている疑いがあります。
慢性的に生理不順な方の場合、またか・・・と放置する方もいらっしゃるでしょう。
既にPMSになっているかもわかりませんので、少しでも生理がおかしいなと感じたら専門のクリニックで診察を受けましょう。
現代の治療はピルだけでなく、サプリメントや漢方を使った治療法もあり、副作用などの心配も少なくなっており、安心して治療することが可能です。
漢方治療は、お腹を触る腹診や脈をみる脈診などをして、患者さんの体質や滞っている部分を見つける「弁証」から始まります。クリニックによっては、西洋医学的な検査機器を併用して検査することもあるそうです。最初の見立てによって、どんな漢方を処方すべきかが決まりますから、漢方治療における最も重要なポイントと言えます。
クリニックで漢方治療を受ける場合、PMSなどの症状改善を目的として処方される薬は健康保険が適用となる薬から選択されるケースがほとんど。PMSや月経困難症などの婦人科疾患のためにブレンドされた薬が主に処方されます。
例えば、“気”を整えるための薬として「加味逍遥散」や「抑肝散」、“血”の巡りを促す「当帰芍薬散」や「桂枝茯苓丸」、水分の排出を促してむくみを取る「五苓散」や「柴苓湯」などが用いられるそうです。
効果が表れるまでに時間がかかる、というのが漢方薬に対する一般的なイメージ。確かに、西洋薬に比べると生薬の効き目は緩やかで、効果を実感するまでに長期間服用を続けなければなりません。しかし、症状を改善する即効性が期待できない代わりに、根本的な体質改善が期待できるのが漢方薬。長い目で見れば、PMSの症状が出ない身体へと変えることが可能である点は、漢方薬の最大のメリットです。
五苓散は利水剤としてしようされ、体内の余計な水分を排出し身体の代謝機能を正常に戻してくれます。PMSによる冷えやむくみ・頭痛・めまいなどの症状に効果的な漢方です。
成分・効能
副作用
桂枝茯苓丸は生理痛、生理不順、更年期障害、冷え、頭痛、婦人疾患、のぼせなどに効果があります。
成分・効能
副作用
桃核承気湯は生理不順・便秘・イライラ・腰痛・不安感・のぼせなどに効果のある漢方です。
成分・効能
副作用
半夏厚朴湯は、抑うつ気分、情緒不安定、イライラの緩和、呼吸困難などに効果があり、気分をリラックスさせてくれます。
成分・効能
副作用
当帰芍薬散は貧血、生理不順、冷え性、肩こり、身体を温める、ホルモンバランスを整える効果があります。
成分・効能
副作用
漢方を飲み始めてその効果を実感するようなるのは、約1か月後からです。薬のようにすぐに効き目があるわけではないため、長い目で見て服用する必要があります。2か月経過しても体に変化がない場合は医師に相談してみましょう。
漢方は食事と食事の間に飲むと効果的です。12時に昼食、19時に夕食であれば15時あたりに服用すると良いでしょう。また、胃の中に何も入っていないほうが吸収しやすくなります。
漢方は、人肌程度のお湯で飲むことが推奨されています。外出先などで難しい場合は水でも構いません。面倒だからと、コーヒーやジュースと一緒に飲まないようにしましょう。
漢方薬を手に入れるには、病院で処方してもらう方法とドラッグストアや薬局で購入する2つの方法があります。
病院で処方してもらう場合は、医師に症状の程度や期間について相談することが可能です。PMSの場合、低用量ピルを処方されることが多いようですが、漢方を希望すれば処方してもらえます。
また漢方はドラッグストアや薬局でも販売されているため、いつでも手軽に購入できるものです。自身に当てはまる症状に有効な漢方をネットで事前に調べ、店舗に薬剤師がいる場合は相談して購入しましょう。また、漢方薬局であればその人の症状に合わせたオーダーメイドの漢方を作ってもらうこともできます。
さまざまな方法で漢方を購入することができますが、初めて漢方を飲む場合には、やはり病院でカウンセリングを受けてからの服用がおすすめです。
世田谷区にある『Kメディカルクリニック』は、漢方薬を使った東洋医学的治療と、西洋医学的な内科治療の両方が受けられるクリニック。一般的な内科的疾患の他、アレルギー疾患や糖尿病などの治療にも力を入れており、漢方治療は内科治療と並行して行われています。
西洋薬では作用が強すぎたり体質に合わないという患者さんに、保険適用の漢方薬による東洋医学的な治療を勧めているそうです。PMSの改善に有効な薬として、有名な婦人薬「加味逍遥散」や「当帰芍薬散」などを処方しています。